ゆとりとコンサル

外資系戦略コンサルの日常と苦悩

コンサルタントのその後のキャリア

どうも。かすてらこんぶです。

今回は、コンサルタントの転職について書きたいと思います。特に新卒の方は気にされるポイントなのではと思いますので、ご参考になれば。

なお、私もキャリアとしては2社しか肌感覚はありませんので、必ずしも以下が全ファームでの実態とイコールではない可能性は事前にご了承下さい。

 

そもそものコンサルとしての勤続年数

戦略コンサルタントとしての勤続年数は、バラツキはありますが概ね3-5年程度の方が多いのではないかと思います。勿論それ以前にカウンセリングアウトを喰らって辞めていく方もいれば、仕事がドハマリして10年~勤続しパートナーになる方もいますが、平均値としてはこの位だと理解頂ければ。

 

残存する理由・辞めていく理由は人それぞれなのですが、自身や周囲を見るに概ね以下に集約されています。

・残存する理由

 ┗仕事が単純に面白い(特に順調に出世する人)

 ┗やりたい事が見つからない

 ┗現状の待遇(給与/労働時間)に充分満足している

・辞めていく理由

 ┗仕事がつまらない

 ┗社内での評価が低い/冷遇されている

 ┗やりたい事が明確にある

 ┗より良い待遇(給与/労働時間)を求めている

特に、辞めていく理由については、当然複合的なのですが、体感としてやりたい事がある方・より良い待遇(特に労働時間)を求めている方が多いですね。

 

では、そうした方がどこに辞めていくのか。選択肢としては、殆どが

A:to他コンサル

B:to大手事業会社

C:toベンチャー

D:toファンド

E:to起業 

の5つです(その他投資銀行MBA/留学・家業の承継などもありますが比率としては高くない印象)。この中での比率は辞めていく方のポジションにも依存しますが、3-5年で辞めていく中堅程度のコンサルタントを想定すると、

A:B:C:D:E=2:4:2:1:1という実感ですね。

以下では、具体的にそれぞれの道を歩む方の志向や待遇等、実例に基づき示していきます。

 

A:to他コンサル

 業界内の横滑りで、戦略➔戦略、総合➔戦略、戦略➔総合等、いずれのパターンも存在します。

 

難易度

現職でコンサルファームにいらっしゃる方は分かると思いますが、同業他社への転職は驚くほど簡単です。特にBCGやデロイト等の大規模ファームは、毎月中途が数十人入社してくるという状況なので、まともなファーム出身の方ならいとも簡単に入れてしまうのです。

採用側からしても、事業会社出身の中途の方に比べて教育コストがかからない為、元コンサルを優先して採りたくなる側面はあります。(その分、中途事業会社の方に比べると器用貧乏な一面もありますが)

 

志向

多いのは、社内で評価されていない/冷遇されている方、より良い待遇(給与面が多い)を求めている方ですね。総合➔戦略の場合は、仕事自体がつまらないので転職する方もいます。

また、戦略ファームに属している方でも、より自分の興味があるプラクティスに強いファームに転職するケースもあります。

 

待遇

多くは給与がステイorアップでしょう。戦略➔総合であれば、現職の一つ上や二つ上のポジションで入れるケースも多いです。戦略コンサルファームであれば給与差はあまり無いので、待遇の悪化があるケースはあまり無いと思います。また、総合ファームはマネージャーでも正直戦略ファームのシニア程度の給与ですが、転職時にマネージャー以上で入れるケースも多いので、結果的に給与は維持出来ると思います。

知人で、MBB➔その他戦略➔BIG4と、ファームのブランド力を利用して転職を続け、年収を瞬く間にアップさせた方もいます(笑)

労働時間についてはファームやプラクティスに依るので何とも言えませんが、大規模ファーム程、短い傾向にあると思います。

 

  • 同業他社内での転職は想像以上に簡単
  • 業務内容自体の大きな変化というよりは、社内評価のリセットや、より良い給与を目的とした転職が多い
  • 待遇上は、不満を感じるケースはあまり無く、横滑りを繰り返して年収をアップさせ続けるプレイも可能(個人的には嫌いですが)

 

B:to大手事業会社

 事業会社への転職で、多いのは経営企画部や新規事業部等。元のポジションや事業サイズによっては、特定事業部長に転職する方もいます。

 

難易度

こちらも、大手の事業会社はポストコンサルを経営企画に置いている企業も多い為、比較的容易に入社は可能だと思います。特にコンサル時代にプロジェクト経験を積んだ業界であれば尚更でしょう。一部、ポストコンサルをあまり雇っていない業界もあるため、そうした業界の大手企業への入社難易度は高いと思います。

 

志向

事業会社に関しては、やりたい事が行先にある or より良い待遇(労働時間)を求めるケースが殆どでしょう。労働時間の短さにつられて転職する方の一部には、やはりやりがいの観点でコンサルに戻ってくる方もいます。

 

待遇

給与に関しては、多くの場合コンサル時代程は望めない場合が多いです。昇進が遅い人の場合は、給与アップもありえますが、出世カーブは事業会社の方がコンサルファームよりは確実に緩やかなので、中長期的に比較すると給与を諦めざるを得ないケースが多いですね。ですので、それを踏まえてもよしとする理由(特定企業ないしは業界ないしは職種へのこだわり)が無いのであれば、取るべき選択ではないと思います。

 

  • ある意味コンサル慣れしている大手事業会社への転職は、ポストコンサルの取る主要なオプションの一つ
  • 但し、やりたい事を明確に見つけての選択と、単に楽を求めての選択では状況が異なる
  • 給与の面では妥協せざるを得ないケースが多いので、動機は純粋に吟味すべき

 

C:toベンチャー

 スタートアップの世界に飛び込むパターン。基本的には高位の役職につくケースが多く、CXOや~部長のポジションが主になります。

 

難易度

スタートアップの人材不足は慢性的なものです。猫の手も借りたい状況の中、ポストコンサルに対するベンチャーからの求人も思いの外増えてきています。スタートアップのハードルが低くなっている昨今の状況も踏まえると、転職難易度は低いと言えましょう。

 

志向

こちらは、コンサルよりもっと主導的・どろどろした仕事が出来るという意味で、コンサルの仕事がつまらないと感じる方、やりたい事業ドンピシャのスタートアップを見つけた方、中長期的な金銭アップサイドを目的とした方等、動機が比較的多様かと思います。

 

待遇

短期的には給与は下がる場合が大きいですね。ベンチャーにとってはとにかくキャッシュが死活問題なので、ベースは落ちつつSOP(ストックオプション)を付与される形が一般的なのではないでしょうか。SOPがどの程度跳ねるかはポジション・ファームに寄りますが、CXOクラスで早期から入れるのであれば、5年後数億~数十億円というアップサイドもあるので、夢のある転職かなと思います。

 

  • スタートアップは裾野も広がりつつあり、コンサルタントの転職先として主要なオプションになりつつある
  • 動機は多様だが、事業の内容か金銭的アップサイドの魅力が主
  • ベースは下げざるを得ないが、ストックオプションが上手くはまればラットレースを抜けられる可能性も有るため、魅力度は高い

 

D:toファンド

 投資やバリューアップを主な生業とするファンドへの転職。基本的にはPEファンドを想定して書きます。

 

難易度

ファンドへの転職は、その他選択肢に比べると難易度が高いオプションです。外資有名ファンドや国内御三家は従業員数がそもそも多くなく、転職に際してもガチの金融勢(外資投資銀行)と戦わざるをえないケースが多いので、コンサルタントとしてろくに成功していない方には困難な道のりです。加えて、新しいファンドを組成するタイミング以外では、人材需要が発生しにくいという側面もあります。ファンドにもタイプがあり、ハンズオン型支援が主のファンドはコンサル出身者が多く、比較的入りやすいと言えます。

 

志向

ファンドに行く方に多い理由は、給与面でのアップサイドです。付随して、実際にEquityを持つ形での経営への関与をほぼノーリスクで実現出来るのも一因かと思います。コンサルでの仕事とファンドでの仕事は似ている様で似ていない部分も多い為、経営を学ぶ観点でのネクストステップとしては非常に良いのではないでしょうか。

 

待遇

PEファンドもピンキリ、かつその人の能力によって一番下のアソシエイトだったりVPだったりしますので一概には言えませんが、給与はステイorアップのケースが多いかなと思います。外資系ファンドだと、コンサル4年目1,000万円プレーヤーがファンドのシニアソ1,400万円という事例は見ました。一方で、国内御三家の求人を見ていると、一番下っ端のポジションですとPEファンドと言えど700-800万円のケースもあります。

PEファンドの魅力はキャリーですね(関与案件がExitに成功した場合、ファンド償還益を差し引いた残りがボーナスとして分配)。コンサル時代の先輩で上手くキャリーをGETし35歳でアーリーリタイアという方もいますので、ベンチャー同様に高いリターンが見込める業界だと思います。

 

  • PEファンドはコンサルからでも転職難易度は比較的高い。ハンズオン型のPEであればコンサル出身者は多く余地あり
  • 給与の上昇とより実権を握った上での経営への関与が魅力的。案件ソーシングや出資判断は勿論、バリューアップをコンサル時代よりも具体的に取り組めるのは良い点
  • ベースの給与も高く、労働時間は長いが希望はある。特にキャリーが期待出来るか否かは重要

 

E:to起業

 最後は起業。文字通り、自らで業を起こす為にコンサルを辞めていくオプションです。

 

難易度

組織に属して働く道では無く、自分で業を起こす道なので、ある意味難易度は最も高いです。特にコンサルタントの多くは生活が約束された状況である為、その心理的ハードルは相当に険しいものになるでしょう。加えて、自分に足りないケイパビリティがある場合、メンバーやネットワーク確保も必要になる為尚更です。

 

志向

起業を志す人は、やりたい事がある方が殆どです。それに加えてベンチャーへの転職同様、中長期的な金銭的アップサイドもあると思います。やはり、自分で成し遂げた仕事が市場から高い評価を得るという事が相当に気持ち良いものであることは想像に難くありません。

 

待遇

元から相当な資産や仕組みづくりが無い限り、給与の面では苦しみながら走ることになります。筆者の周囲では、週2日はフリーコンサルとして業者の下請けで働きつつ、残りで自身の会社の仕事をするメンバーもいます(ちなみにフリーコンサルは普通に月給100-150万円程度は余裕で稼げます)。勿論サービス系やコンサル企業の立ち上げであれば早期から収入を得ることは可能ですが、多くの場合はいずれにせよ苦しい生活を余儀なくされます。

その分アップサイドは凄まじく、5年間でIPOや売却に成功した場合、基本的には一生働かなくとも良いだけの金額を得られるオプションでしょう(IPOの場合はそうではないケースもありますが)

 

  • 起業はある意味転職難易度が最も高く、慎重に選ぶべき
  • やりたい事があるのであれば、全てを自分で作っていく感覚が味わえる夢の道
  • 短期的には待遇面は期待できないものの、週末起業に近いオプションでリスクを軽減可能。加えて、Exit成功時のアップサイドは計り知れない

 

まとめ

以上、コンサルタントの転職事情についてご紹介しました。私も3-5年の間に転職を挟んだクチですが、世間で言われている程、コンサルの未来がバラ色では無い一方、ポストコンサルの裾野が広がりつつ有るのも事実だと思います。

ただ一つ言えるのは、コンサル時代にパフォームしなかった人間がコンサル以外の道に進んでも、本当に成功する人間はごく一部(適正が際立っている人間)なので、コンサルティングという仕事を未来への切符かの様に履き違えるべきではないということです。

コンサルという仕事をキャリアの入口・通過点として考えておられる方の参考になれば幸いです。

読了ありがとうございました。